冷蔵庫はどうして冷える?“熱を捨てる箱”の逆転発想

「冷蔵庫って、どうやって冷やしてるの?」
…これ、家族の会話でふいに出る質問ランキング上位だと思う。
結論から言うと、冷蔵庫は“冷たさ”を作ってるんじゃなくて、庫内の“熱”を外へ運び出してるんだ。
ちょっと不思議だよね。
だって、熱って自然に動くなら「温かい → 冷たい」へ流れるはず。
なのに冷蔵庫はその逆をやってる。
今日はこの“逆転の発想”を、できるだけむずかしい式なしで、家の中の例をたくさん使って解きほぐすよ。
読み終わるころには、冷蔵庫の背中が温かい理由も、霜ができる理由も、「開け閉めって何がダメなの?」も、スッと説明できるようになる。
熱ってなに?「冷たさ」は作れない

熱は“移動する”もの:高い→低いへ流れる
まず前提。
理科でよく言う「熱(ねつ)」は、ざっくり言うとあたたかさのもと。
そして熱は、基本的に勝手に「熱いところ → 冷たいところ」へ流れる。
たとえば…
- 熱いお茶は、放っておくと冷める(熱が部屋へ逃げる)
- 氷は、放っておくと溶ける(周りから熱を受け取る)
ここで大事な言い方がある。
「冷える」=“冷たさが増える”じゃなくて、“熱が減る”
冷蔵庫がやってるのは、庫内の熱を減らすこと。
つまり、庫内の熱をどこかへ持っていくことなんだ。
冷える=熱が減る(外へ出る)という見方
じゃあ「熱が減る」ってどういうこと?
イメージはこれ。
- 冷蔵庫の中(庫内)=熱が少ない状態をキープしたい
- 部屋(外)=熱が多い(庫内より温かい)
でも、放っておくと外の熱が庫内へ入ってくる。
だから冷蔵庫は、入ってきた熱を外へ捨て続ける必要がある。
「捨てるって、どこに?」
→ 冷蔵庫の外、つまり部屋の空気へだよ。
断熱(だんねつ)と“ドアの開け閉め”が効くのはなぜ?
冷蔵庫の壁は分厚いよね。
あれは断熱(だんねつ)(=熱を通しにくくする工夫)。
断熱があるから、熱が入りにくい。
でもドアを開けた瞬間、断熱の壁がなくなる。
そのとき何が起きるかというと…
- 冷たい空気は重い(下にたまりやすい)
- 温かい空気は軽い(上にのぼりやすい)
ドアを開けると、冷たい空気がスルッと外へ出て、温かい空気が中へ入る。
つまり、開け閉めは「空気の入れ替え」で、熱が一気に入りやすい行動なんだ。
この記事のポイント
- 「冷える」とは“冷たさが増える”ではなく、熱が減ること
- 熱は基本、勝手に「熱い→冷たい」へ流れる
- 冷蔵庫は入ってきた熱を外へ運び出すことで冷たさを保つ
- ドアを開けると、断熱がなくなり空気ごと熱が入れ替わりやすい
Q&A(子どもの疑問っぽく!)
-
冷蔵庫の中に氷を入れたら、もっと冷える?
-
一時的に冷たく感じても、氷は溶けるときに周りから熱を吸うだけで、冷蔵庫全体を“勝手に冷やし続ける装置”にはならないよ。結局、溶けた分の熱は冷蔵庫が外へ運ぶ必要があるんだ。
-
夏に冷蔵庫が効きにくい気がするのはなぜ?
-
部屋が暑いと、外へ捨てる相手(部屋の空気)が温かいから、同じだけ熱を捨てるのが大変になりやすい。さらに開け閉めで入ってくる空気も暑いよね。
冷蔵庫の心臓部:冷媒(れいばい)サイクル

冷蔵庫の仕組みを一言で言うと、“冷媒(れいばい)”という液体(気体にもなる)が、熱を運ぶ配達員。
冷媒は、次の4ステップをぐるぐる回る。
- 圧縮(あっしゅく)して熱くなる
- 外で冷やして熱を捨てる
- 膨張(ぼうちょう)して一気に冷える
- 中で蒸発(じょうはつ)して熱を集める
この循環を 冷媒サイクル(冷凍サイクル)と呼ぶよ。
圧縮→熱くなる:コンプレッサの仕事
冷蔵庫の下のほうで「ブーーン」と鳴ることがあるよね。
あれが コンプレッサ(圧縮機)。
コンプレッサは冷媒の気体をギュッと圧縮する。
気体をギュッとすると、温度が上がりやすい(空気入れでタイヤを膨らませると、先が熱くなるのと似てる)。
つまり、ここで冷媒は熱い気体になる。
凝縮→外へ熱を捨てる:背面が温かい理由
熱い冷媒は、冷蔵庫の外側(背面や側面の配管や放熱部分)を通って、部屋の空気に熱を渡す。
熱を渡すと冷媒は冷えて、気体→液体へ変わりやすくなる。これが 凝縮(ぎょうしゅく)。
だから冷蔵庫の背中が温かいのは、
「庫内から運んできた熱を、外へ放り出してる最中」だからなんだ。
「え、じゃあ部屋が暑くなるの?」
→ うん、理屈ではそう。冷蔵庫は部屋を冷やす装置じゃなくて、庫内を冷やすために部屋へ熱を捨てる装置だからね。
膨張→冷える:一気に温度が下がるポイント
次に冷媒は、細い通り道(膨張弁のような役割の部分)を通って、圧力を下げられる。
これが 膨張(ぼうちょう)。
圧力が下がると、冷媒は一気に冷えやすい。
ここで、冷媒は「冷たい状態」になって庫内側へ向かう。
蒸発→熱を集める:蒸発器(じょうはつき)で“熱を奪う”
庫内側の冷たい配管(蒸発器)で、冷媒は液体→気体へ変わりながら、周りから熱を吸う。
これが 蒸発(じょうはつ)。
ポイントはここ:
- 蒸発するとき、周りから熱を吸いやすい
- その熱を吸う場所が、冷蔵庫の中(庫内)
だから庫内は冷える。
そして熱を吸って気体になった冷媒は、またコンプレッサに戻って…ぐるぐる。
この記事のポイント
- 冷蔵庫は冷媒という“熱の運び屋”で庫内の熱を外へ運ぶ
- コンプレッサで圧縮すると冷媒は熱くなり、外で熱を捨てる
- 圧力を下げる(膨張)と冷媒は冷えやすくなる
- 庫内では蒸発で熱を集め、「熱を吸う→外へ捨てる」を繰り返す
-
背中や側面が熱いのは故障じゃない?
-
多くの場合は正常。
庫内の熱を外へ捨てている証拠だよ。ただし触れないくらい異常に熱い・異臭・異音が続くなどは取扱説明書に従って対応してね。
-
コンプレッサが止まったり動いたりするのはなぜ?
-
庫内温度を見ながら、必要なときだけ運転するため。
ずっと動きっぱなしだと冷えすぎるし、無駄も増えやすい。
-
冷媒って危なくないの?
-
基本は機械の中を回っていて触れないもの。なので普段は心配しなくてOK。ただし分解や改造は危険なので絶対にしないでね。
霜(しも)・自動霜取り・温度ムラの正体

「冷凍庫の奥が白くなる」
「霜がモコモコして扉が閉まりにくい」
これも、あるある。
霜は、冷蔵庫がサボってるわけじゃなく、空気中の水が原因で自然に起きやすい現象なんだ。
霜は“空気中の水”が凍ったもの
空気には目に見えない水が混ざってる。これが 水蒸気(すいじょうき)。
ドアを開けると、部屋の空気が入ってくるよね。
その空気の水蒸気が、冷凍庫のキンキンに冷えた部分に当たると…
- 水蒸気 → 水の粒 → そのまま凍る(氷の粒)
これが霜。
つまり霜は、ざっくり言うと“空気が持ち込んだ水分の氷”。
だから、
- 開け閉めが多いほど(=湿った空気が入るほど)
- 温かい食材をそのまま入れるほど(=水蒸気が増えるほど)
霜は増えやすい。
霜が増えると何が困る?「熱の通り道」がふさがる
霜が付くと、見た目だけじゃなく性能にも影響する。
冷凍庫が冷えるのは、庫内の空気が冷たい面(蒸発器まわり)で冷やされ、風で回るから。
でも霜が厚くなると…
- 冷たい面が霜でおおわれる
- 風の通り道が狭くなる(目詰まり)
- 結果:冷えにくくなりやすい
つまり霜は、冷蔵庫にとって“コートを着せすぎる”みたいなもの。
冷やす面が隠れると、熱をうまく回収できない。
自動霜取りって何をしてる?
最近の冷蔵庫には 自動霜取り(自動デフロスト)機能があることが多い。
これは、一定のタイミングで
- 冷やす運転を止める
- 霜を溶かす(ヒーターなどを使う方式もある)
- 溶けた水を外へ流す
ということをやってる。
ここで知っておくと安心なのが、
霜取り中は一時的に温度が少し上がることがあるってこと。
「さっきより温かい?」と感じても、短時間なら霜取りの可能性があるよ。
温度ムラの正体:空気の流れと“詰め方”
「奥のほうが冷えすぎる」
「ドア側がぬるい」
これも、空気の流れが関係する。
冷蔵庫の中には、冷たい風の通り道があって、
風がよく当たる場所は冷えやすい。
さらに、食品をギチギチに詰めると風が回りにくい。
逆にスカスカすぎても、開け閉めで空気が動いて温度がブレやすいこともある。
つまり温度ムラは「性能が悪い」だけじゃなくて、置き方・詰め方で変わりやすいんだ。
この記事のポイント
- 霜は空気中の水分が凍ったもので、開け閉めで増えやすい
- 霜が厚いと、冷やす面や風の通り道がふさがれて冷えにくくなりやすい
- 自動霜取りは“定期的に溶かして流す”仕組みで、短時間の温度変化は起こり得る
- 温度ムラは空気の流れ+詰め方で起きやすい
-
冷凍庫が白くなるのはなぜ?
-
霜(=空気中の水分が凍ったもの)が付いた可能性が高いよ。開け閉めや食品の水分で増えやすい。
-
冷蔵室の奥が凍ることがあるのはなぜ?
-
冷たい風が当たりやすい場所に、水分の多い食品(野菜・飲み物など)が近いと凍りやすいことがある。置き場所を変えると改善することもあるよ。
効率が上がる入れ方・並べ方・ドアの開閉(ここが一番“効く”)

ここは家庭でいちばん差が出やすいところ。
ただし「こうすれば必ず節約!」みたいな断定はできない(家の温度や使い方で変わる)ので、
“冷蔵庫がラクをできる状態”を作るという考え方でいこう。
入れ方:冷蔵室は詰めすぎない、冷凍庫は空気を止めすぎない
よく言われるのがこれ。
- 冷蔵室:詰めすぎると風が回らず、温度ムラが増えやすい
- 冷凍庫:ある程度入っている方が温度が安定しやすい場合がある(食品自体が“冷たさの貯金箱”になる)
ただし「冷凍庫はパンパンが正義!」も言いすぎ注意。
風の通り道まで完全にふさぐと、やっぱり冷え方に影響が出やすい。
コツはシンプルで、
“風の出口・入口っぽい所は空ける”。
たいてい奥や上に通風口があるから、そこは塞がないのが無難だよ。
並べ方:取り出しやすさ=開けてる時間を短くする最強テク
ドア開閉でいちばん効くのは、回数よりも開けている時間。
冷蔵庫の前で、
「えっと…あれどこだっけ?」
って探す時間が長いほど、温かい空気が中へ入る。
だから並べ方のゴールは、
“探さない配置”。
おすすめの考え方(家族で運用しやすい順):
- 1軍(毎日使う):手前・目の高さ(例:牛乳、麦茶、よく使う調味料)
- 2軍(ときどき):奥・上(例:ジャム、ストック)
- “迷子ゾーン”を作らない:小物はケースにまとめて「箱ごと出す」
「ケースに入れて箱ごと出す」って、地味だけど強い。
ドアを開けたまま小物をつまむ時間が激減するからね。
熱いものは冷ましてから:庫内に“熱の爆弾”を入れない
熱い鍋をそのまま入れると何が起きる?
- 鍋の熱が庫内へ放出される
- その熱を外へ捨てるために、冷蔵庫ががんばる
- さらに湯気(=水蒸気)が増えて霜や結露の原因になりやすい
もちろん、衛生面で早く冷ましたい場面もあるから、
「絶対ダメ」とは言わないけど、基本の考えとしては
“粗熱(あらねつ)を取ってから”が冷蔵庫には優しい。
置き方:放熱できないと“熱を捨てられない”
冷蔵庫は庫内の熱を外へ捨てる箱。
ということは、外側で熱を捨てられないと苦しい。
たとえば…
- 背面や側面が壁にピッタリ
- 上に物をギュウギュウに置く
- 周りが熱い(直射日光、コンロの近く)
こうなると、熱を捨てにくくなりやすい。
目安は「取扱説明書の推奨すき間」が基本。
(メーカーや機種で違うから、そこが一番安全で確実)
ドアの開閉:3秒ルール(気持ち)で勝てる
家族でできる、いちばんラクなルールはこれ。
- 開ける前に「何を取るか」決める
- 開けたら“まっすぐ取る”
- 迷ったらいったん閉める(再オープンでもOK)
人間は、開けたまま考えがち。
でも冷蔵庫は、開けたまま考えられるほど余裕がない(熱が入るからね)。
この記事のポイント
- 効率アップの本質は「冷蔵庫がラクをできる環境」を作ること
- 冷蔵室は詰めすぎると風が回りにくく、温度ムラが増えやすい
- 並べ方は“探さない配置”が最強=開けている時間が短くなる
- 熱いもの&湯気は庫内の熱・湿気を増やしやすい
- 置き方は放熱がカギ:熱を捨てられないと冷えにくくなりやすい
Q&A
-
冷蔵庫の上に物を置くとダメ?
-
機種によるけど、放熱の邪魔になる置き方は避けたい。安全なのは取扱説明書の範囲内にすることだよ(特に上や背面のすき間)。
-
冷凍庫はパンパンの方がいいって本当?
-
入っている方が温度が安定しやすい場面はあるけど、風の通り道まで塞ぐと逆効果になる。通風口の近くは空けるのがおすすめ。
-
ドアを開ける回数と時間、どっちが悪いの?
-
どっちも影響はあるけど、体感的に効きやすいのは“開けている時間”。探し物が長いほど温かい空気が入りやすいから、配置を工夫すると勝ちやすいよ。
まとめ:冷蔵庫は「冷たさ製造機」ではなく「熱の運び屋」

冷蔵庫の正体は、庫内の熱を外へ運び出す装置。
冷媒が“熱を配達”して、背中側で捨てているから、背面が温かくなる。
そして、霜・温度ムラ・冷えにくさの多くは、
「空気(=熱と水分)をどれだけ入れてしまうか」
「風や放熱の道をふさいでいないか」
で説明できる。
つまり、家族ができる改善は、
“冷蔵庫の仕事を増やさない”こと。
入れ方・並べ方・ドアの開閉は、そのまま理科の実践だよ。
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